心筋梗塞

心筋梗塞とは

心筋梗塞は、心臓に酸素と栄養を送る冠動脈が詰まる閉塞を起こして血流が阻害され、心臓を動かす筋肉である心筋の一部が壊死してしまう疾患です。心筋には3本の冠動脈が酸素と栄養を送っており、1本でも閉塞してしまうと心筋に酸素や栄養が届かなくなって壊死してしまいます。心筋の壊死が進行すると、心臓から全身へ十分な血液を送れなくなり、最悪の場合、死に至る可能性があります。
胸部の激しい痛みが持続する場合は、心筋梗塞の可能性が高いです。心筋の壊死を防ぐためには、速やかな治療が必要です。疑わしい症状がある場合は、救急車を呼ぶなど、迅速な対応が重要です。

心筋梗塞の症状

心筋梗塞は、激しい胸痛が特徴的で、「強く締め付けられる」「圧迫される」「焼けるような感じ」と表現されます。この胸痛は、胸部にとどまらず、背中、肩、首、喉、歯などにも広がることがあります。
急性心筋梗塞の場合、痛みが30分以上続き、安静やニトログリセリン舌下錠を使用しても症状の改善に繋がりません。また、冷や汗、めまい、吐き気、呼吸困難、意識喪失などの症状も起こることがあります。
ただし、糖尿病の方や高齢者の方は、心筋梗塞による明確な症状が現れずに、心筋梗塞を起こしている可能性があるため、定期的な検査を受けることが必要です。

心筋梗塞の原因

心筋梗塞は、主に動脈硬化によって引き起こされます。動脈硬化は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの要因によって発症し、血管の柔軟性が失われて硬くなり、進行すると、血管壁が厚くなって内径が狭くなり、狭窄や閉塞を引き起こしやすくなります。

動脈硬化によって血管が狭くなると、内皮細胞が傷つき、悪玉であるLDLコレステロールが過剰に存在すると、それが入り込んで酸化し、有害な酸化LDLに変化します。通常、免疫細胞のマクロファージが酸化LDLを食べて消滅させますが、酸化LDLが過剰な場合、マクロファージは死滅し、その死骸を含む脂質の塊が形成され、粥状のプラークになって沈着します。プラークが破裂すると急速に血栓が形成され、血流に乗って流れ、血管を閉塞することがあります。心臓の場合、冠動脈に流れ着いて、閉塞を起こした状態が心筋梗塞です。

心筋梗塞の検査

血液検査

採血を行い、血液中に特有の酵素が無いかを調べます。心筋トロポニンTという酵素を調べます。心筋が壊死すると、心筋細胞の中から心筋トロポニンTが血中に漏れ出てきます。この特有の酵素の量を測定することによって、心筋壊死の有無やその程度を判断することができます。
この検査は迅速キットを用いて行われ、迅速に診断することが可能です。当院でもこの検査を実施することができます。

心電図

心筋梗塞の診断で最も重要な検査です。侵襲性がなく迅速に行うことができます。心筋梗塞特有の波形の有無を確認します。心筋梗塞が発生すると、心臓の一部の筋肉が酸素不足によりダメージを受け、心電図上で特有の変化が現れます。

心臓超音波検査

 

超音波をあてて、心筋梗塞による心筋の運動性が低下している部分を確認し、発生した部分や梗塞の程度を判断します。

冠動脈造影検査

手首や足からカテーテルを挿入し、冠動脈に造影剤を注入することで、X線によって冠動脈の狭窄や閉塞している部位を特定します。

心筋梗塞の治療

心筋梗塞発作が起きた場合、血流を早急に再灌流することが極めて重要です。現在では、閉塞部位を血栓溶解剤で溶かす治療と、バルーンやステントによって拡張するカテーテル・インターベンション(PCI)による治療が行われています。

血栓溶解剤による治療

血栓溶解剤による治療では、特定の薬剤を静脈内投与することで血栓を溶解させます。これにより、閉塞している血管の再開通を促し、心筋に対する血流を回復させます。血栓溶解剤は迅速に作用しますが、適切な患者様の選択と注意深い管理が必要です。

カテーテル・インターベンション(PCI)による治療

カテーテル・インターベンションは足や腕の血管から挿入し、血管が詰まっている部分までカテーテルを進ませてバルーンで押し広げ、筒状の金属であるステントを留置して再狭窄を防ぎます。局所麻酔による治療が可能で、1〜2時間ほどで治療を行うことができます。 カテーテル・インターベンションは即効性があり、血流再灌流を確実に行うことができます。

生活習慣の改善・薬物療法

 

心筋梗塞を引き起こすリスク要因である高血圧症、脂質異常症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などがある場合には、まずは生活習慣の改善を行い、それだけでは不十分な場合は薬物療法によって状態を管理することが重要です。また、既に狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを経験した方も、適切な抗血小板薬や抗凝固薬を服用して血栓を防ぐ適切な治療を継続する必要があります。
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